引き出しに夏空
サディスティック・ミカ・バンドのファーストアルバム収録曲です。
夏のゲレンデのスピーカーでデカイタイム感でこだましているみたいな音像。アップビートがスカやレゲエっぽくもありますがジェントルで落ち着いたテンポ感、グルーヴ感でナイスミドルの嗜みっぽい。エンディングのリズムのキメとか社交ダンス音楽っぽいです。ゆったりとしたフィールが夏休みっぽいです。
空の果てに腰かけて、との主題。夢があります。歌のなかでは空にの果てに腰かけることがあなうのです。“こうして ゆらゆらと”とセクションが変わるところで転調(Gメージャー調からB♭調へ。短3度の間隔です)し景色を一新します。このセクションからボーカルメロディの音価も雄大に、おおまたぎになります。細かいことにとらわれない博愛。広さを思わせます。
本曲の作詞の松山猛さんの加藤和彦さん関連の作歴にはフォークルの『イムジン河』『帰って来たヨッパライ』などがありますしSMB(サディスティック・ミカ・バンド)の『タイムマシンにおねがい』も松山猛さんの作詞です。いずれも作家の作歴やバンドのキャリアにおいても極めて重要な作品です。
このファーストアルバムのリリースの翌年に『タイムマシンにおねがい』のリリースに至り、『タイムマシンにおねがい』は曲名の通り時代すら飛び越える名高い傑作として横断の旅を続けるわけです。そんな名曲のリリースに至る前の年に、永遠の夏休みみたいな加藤和彦さんののどかで素朴な歌声を活かしたグッドフィーリングなアルバム曲、すなわち本曲『空の果てに腰かけて』があったのを記憶の引き出しに入れておいてください。
空の果てに腰かけて サディスティック・ミカ・バンド 曲の名義、発表の概要
作詞:松山猛、作曲:加藤和彦。サディスティック・ミカ・バンドのアルバム『SADISTIC MIKA BAND』(1973)に収録。
サディスティック・ミカ・バンド 空の果てに腰かけて(アルバム『SADISTIC MIKA BAND』収録)を聴く
加藤さんの歌声、そしてピアノが中央付近で奥にむかって遠くこだまします。ほかのパートはこだま系のエフェクトをそんなにまとっておらず比較的ドライな音像です。
左寄りにポルタメントするスティールギターの音色。この音色を聴くと私は極楽を思います。バカンスっぽい。夏休みを連想する理由はこのポルタメントサウンドとディレイによる効果が大きいと思います。
ピアノが響きや音像の印象をリードします。雰囲気が変わるBセクションでボーカルがまず1小節目に出てからピロリーンと2小節目で遅れて上から下方向へのアルペジオで合いの手をかますのもピアノです。間奏のソロもピアノ。
右にしゃくしゃくとアップビートを添えるアコギがいて、左には1拍目と3拍目に的をしぼったアップビートのリズムの穏やかなエレキがいます。トシッ、テシッ!とドラムの余韻がコントロールされ、ベースが裏拍に引っかかって歩調よく進むグルーヴを敷きます。
人間の演奏に由来する楽器の音で構成されますが、アクセント的に、気管支を通り抜ける空気が裏返ったようなシュコッと短いシンセで生成したみたいな謎の音が入っていて、メカニカルに、ランダムに記憶が引き出されるような気分になります。
のどかから、のどかへ……どこへ行っても果てが遠い景観を作詞面でも表現します。GメージャーからB♭への転調が音楽の意匠・構造的な本曲のハイライトに思えるし、そこに歌詞の外あるいは歌詞すらひっくるめた言いたいこと、主題の『空の果てに腰かけて』の景観が表現されている気がします。雄大な、最大級ののどかです。どこか次元も時代も違う遠い惑星にある大気に浮かんでみたい。
青沼詩郎
サディスティック・ミカ・バンド ユニバーサルミュージックサイトへのリンク
『空の果てに腰かけて』を収録したサディスティック・ミカ・バンドのアルバム『SADISTIC MIKA BAND』(1973)に