ドラマ『木曜日の食卓』

結婚式で新婦を奪ってしまう役を西島秀俊さんが演じ、連れ出される新婦が富田靖子さん、そこで新婦を奪われるのが別所哲也さん。西島さんが演じる役の父役が古谷一行さん、母役が篠ひろ子さん、連れ出される新婦の父役が泉谷しげるさん……と、役者さんの名前と並べてみただけでも気になるドラマ『木曜日の食卓』、1992年の放送で主題歌が竹内まりやさん『家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)』。

家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム) 竹内まりや 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:竹内まりや。編曲:山下達郎。竹内まりやのシングル、アルバム『Quiet Life』(1992)に収録。ドラマ『木曜日の食卓』(1992)主題歌。

竹内まりや 家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)(アルバム『Quiet Life』30th Anniversary Edition収録、2022 Remaster)を聴く

豊富なリファレンスからおのれの肉体を通して黄金律とサウンドをドリップしたような凝縮感、充足感。

バックグラウンドボーカルは隠れようもなし、山下達郎さん。オルガンやエレクトリックギターの片鱗とアイコンタクトを取り合っているみたいな行き交い具合が気持ちよい。

エレキギターのメジャーセブンスの響きを経過的に見せるリフレインのイントロ、コーラスがかったサウンドで印象づけます。アルペジオで終始、コードの響きや降り注ぐリズムで伴奏をリードします。

アコースティックギターのストラミングは左にやや強く感じますが右にも定位が振ってあるでしょうか。同じ演奏を2回録って左右に開くダブルの技法かもしれません。チャキンと歯触りのよいかろやかな音色でバンドを鼓舞します。ギター類の演奏は山下さん。

ドラムスの音がすこぶるよく、特に左から右にむかって横断歩道を渡るみたいなタム類のクリアで高解像度なサウンドが耳福。アビーロード(ビートルズ)のジャケ写かよと謎のツッコミを入れたくなります。

右のほうには出どころを選んでクラヴェス(拍子木)がチコチコと呪文をとなえサウンドを彩ります。タンバリンとトライアングルの合音みたいなのが聴こえる瞬間がある気がするのですがパーカッションの内訳がすべてはわかりません。トライアングルでなくグロッケンなのかも。

バックグラウンドボーカルのダブリング、竹内さんのリードボーカルのサビのダブリングなど、声の輪郭だけでもかなりの充足感があります。手厚いオケと合わさって家の中は充実万歳。でもギター類、ベース、ドラム、オルガン、パーカッションと、私の耳を惹きつける主要な音はそんなに奇天烈なものを含みません。あくまで、誰の家の中にでもあるような(比喩です)ごく普遍的な編成で望み、幸福と充足を獲得したサウンドになっているのが私のうなるところです。理想じゃないか!

幻だけの恋ならば 100回でもできる

それならふたりここで暮らそう 100才になるまで

(『家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)』より、作詞:竹内まりや)

つい西島秀俊さん演じる略奪婚ありというあらすじに注意がいってしまいますが、古谷一行さん・篠ひろ子さん演じる夫婦のほうが(ほうも?)主役なのかもしれません。歌の中であまり具体的なシチュエーションや、人格をはっきり描くのは避けて抽出したような感じもしますが、

好きな歌違う 選ぶ絵も違う

でもいちばん私を知っている

見飽きたはずのあなたでも

いとしい My sweet sweet home

(『家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)』より、作詞:竹内まりや)

なんて、そういうことってあるよね、と、枝葉のあるある思念みたいな気の利いた描写を通して普遍と具象のバランス感に富んだ映像を個別のリスナーのなかにみせてくれます。サウンドも作詞作曲編曲も含めて精緻な職人芸です。100年ぶん、100回ぶん、それぞれのパラレルなスイート・ホームがあるのです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)Quiet Life

参考歌詞サイト 歌ネット>家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)

竹内まりや 公式サイトへのリンク

『家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)』を収録した竹内まりやのアルバム『Quiet Life』(1992)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】 ドラマ『木曜日の食卓』主題歌 家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)(竹内まりやの曲)ギター弾き語り』)