夜明けのBEAT フジファブリック 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:志村正彦。フジファブリックのアルバム『MUSIC』(2010)に収録。
フジファブリック 夜明けのBEATを聴く
ギターの厚みがすごいです。エイトビートのダウンストロークがズンズンと前に足をすすめます。ベースのオシも良いですね。そしてバカスカ暴れるのに丹精で緻密なドラムス最高。
右のほうにいるワウギターが色彩を添えます。あおる、あおる。まっすぐなビートの楽曲にうねり感を添えるナイスな役どころです。
ボーカルのサビのブルーノート。私を悩ませる最高の音程です。こんなクレイジーな音、聴いたことないですよ。最高です。
ソロギターは志村さんが残したデモにあるものを採用したそうです。ちょっと遠くて、ひたすらに歪みが深い鋭いギターですね。上方に音程をはみださせるみたいな音階音の取り方に特徴のある妙なギターです。チョーキングが、私の血管にさした針をぐりぐりとえぐるみたいでいやらしくて最高。よく聴くと、ソロが終わっても次のサビがやってくる瞬間までソロギターが騒ぎ続けていませんか? 混沌として最高。そしてオキマリのキック+ハイハット四発のサビ前のキメに接続して最後のコーラス(サビ)。うえのほうにうっすらハーモニーのボーカルが化粧をほどこします。志村さんの声をプラグインで上の音域に生じさせたのか、元々デモに入っていたのか、はたまた山内さんなのか判じかねますがこの薄化粧がメインボーカルのブルーノートを広がり豊かにします。
マークボランズブギ……とも違うんだけど、とにかく押し出しの強いビート、サウンドの厚み、キレとエッジ感、それと対比するようなメインボーカルのアンニュイなブルーノート。
最高傑作です。この曲があれば何回でも私に夜明けが来ます。
亡くなった志村さんの残したデモを完成に向けて作業していくというアルバムのエピソードがなくても傑作ですが、それ込みで思うといっそう涙を誘います。こんなにクレイジーな曲に深く感動しました。うねってもんどりうって、『モテキ』に出演した森山未來さんみたいに私の心を延々と走っていきます。
歌詞
“半分の事で良いから 君を教えておくれ 些細な事で良いから まずはそこから始めよう ふしだらな夜も良いのさ たまにゃ何かを吐き出そう 街中に走る車の 音がなんだか耳障り バクバク鳴ってる鼓動 旅の始まりの合図さ これから待ってる世界 僕の胸は踊らされる”
“都会の真ん中で君は 何を思っているの だんだん夜更けが近づく 相も変わらず耳障りだ”(フジファブリック『夜明けのBEAT」より、作詞:志村正彦)
私の頭がいやらしいだけなのかもしれませんが、“ふしだらな”につづけて“たまにゃ何かを吐き出そう”とくると、性欲の浄化を想起させるいかにもな表現に思えます。恋愛を描く刺激的なドラマ『モテキ』のイメージと私のなかでこの楽曲の記憶が一体になっているところがあるせいか。『モテキ』の主題歌としてこの曲がどハマりしていることは、あなた、あるいはきっと多くの人がうなずいてくれる事実でしょう。
車や街の喧騒をうるさがっている様子の主人公ですが、あるいはこれは体内で自分の心臓がバクバクいう音に街の喧騒を重ね、「うるせー!」と心の中で檄を飛ばす表現なのかもしれません。
浄化に向かって走り出す情景を表現した傑作です。浄化の象徴が夜明けでしょうか。酒を飲み、遊び疲れてもう眠りたい夜明けよ。夜は邪なもの、煩悩の象徴でもあります。
青沼詩郎
参考Wikipedia>MUSIC (フジファブリックのアルバム)
『夜明けのBEAT』を収録したフジファブリックのアルバム『MUSIC』(2010)
fujifabric
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『夜明けのBEAT(フジファブリックの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)