YouTubeより

Kina Grannis

ひらけた野外で気持ちよさそうです。そよかぜに髪が揺れます。遠くにみえる崖? 地層? 外国の土地にみえます。終始アコースティックギターを弾き語る映像。曲のあとにコメント付き。

オン・マイクなボーカルが近くてどきどきしてしまいます。2コーラス目からハーモニー・ボーカル。ギターも2本になった? ウラ拍を強調するストローク、アルペジオ。キュッキュッといった感じの弦のアタック音は指、もしくは爪の質感でしょうか。

The Rice Brothers gang

スライドギターのトーンが非常にまろやか。音の揺れが調子はずれたように聴こえなくもないですが私には気持ち良い範囲内です。軽妙にハネたグルーヴ。間奏のギターのピッチもギリギリ気持ち良い。ギリギリというか、絶妙です。

Pine Ridge Boys

ヨーデル調のボーカルの導入。テンポはひかえめ。ゆったりしています。高原のノンビリした空気に佇んでいる気分です。2人のハーモニーが気持ち良い。”my only only…”と、オンリィを繰り返すのがチャーミング。エンディングも裏声へ飛んでいくヨーデル調です。

Jimmie Davis

喉の奥に落ちたような、ちょっとつばを飲み込んだときのポジションで歌ったような特徴ある発声。カドがまるい声色ですね。陽気でご機嫌な間奏はクラリネットでしょうか? ソブラノサックス? ミュートの効いたトランペットもいますね。イントロもそうでした。種々の管楽器サウンドが非常にゴキゲンです。ハーモニックなスライドギター。ピアノもホールもしくはルームアンビエントが効いたオフマイクなサウンドで酒場かダンスフロアを思わせる音響です。

曲について

初録音(1939)はPine Ridge Boys。ジミー・デイビスとチャールズ・ミッチェルが1940年に録音。同年の映画『Take Me Back to Oklahoma』に用いられました。 作詞・作曲:Jimmie Davis(ジミー・デイビス)、Charles Mitchell(チャールズ・ミッチェル)。権利売買を経ていて実際の作曲者には諸説あり。

曲の出自の謎

曲をつくったのはライス・ブラザーズ・ギャングのポール・ライス(Paul Rice)で、権利が売買によってジミー・デイビスに渡った……というのが一説。初の録音はパイン・リッジ・ボーイズだとWikipediaにはあります。初録音は、実の作曲者?のポール・ライスでなくパイン・リッジ・ボーイズなの? いろいろと疑問が残ります。パイン・リッジ・ボーイズのためにポール・ライスが書いたのか、あるいはパイン・リッジ・ボーイズのために書いたわけではないが提供したため初の録音がパイン・リッジ・ボーイズになったのか。初の録音はパイン・リッジ・ボーイズであるというのは事実なのか? ポール・ライスらだと思われるライス・ブラザース・ギャングの音源がいつのものなのかも正確にはよくわかりません。

歌詞

出自の仔細はともかく、世界中で愛されている曲だと思います。カバーも非常に多い。歌詞のエディットのしかたも非常にいろいろやられています。

「ユーアーマイサンシャイン……」という歌い出しだと思い込んでいましたが、どうやらオリジナルは「ジ・アザー・ナイト、ディア……」がワンコーラス目の歌い出しのようです。

明るくゴキゲンで愛らしい曲想に思えますが、実は失恋の曲のよう。

歌詞のブロックは4種類確認できます(4コーラスぶん確認できますの意)。

ユー・アー・マイ・サンシャイン……と歌い出すブロック。これは有名な歌い出しだと思いますが実は2コーラス目でした。あなたは私の陽光だよ、灰色の空でも私を幸せにしてくれる、どれだけ私があなたを思っているかあなた知らないでしょ? どうか私を照らしていてよね……みたいな感じでしょうか(雑)。

ジ・アザー・ナイト・ディア……と歌い出すのが真なるワンコーラス目。このコーラスは非常にせつなく悲痛です。あなたを腕に抱いたのは夢で、私の思い違いだった。私はこうべを垂れて涙したよ……みたいな感じ。

アイル・オールウェイズ・ラブ・ユー……で歌い出すコーラスは、ちょっとなんというか執拗な感じがチラつきはじめます。いつも愛してるよ。君を幸せにする。きみもおんなじに思ってくれてるかぎりはそうなんだけどさ、もし他の誰かを愛するために私を手放してごらんよ、きっといつの日も後悔することになるのさ……みたいな感じでしょうか。

ユー・トールド・ミー・ワンス・ディア……と歌い出すブロック。これはもうなんというか怨念めいている……。あなた私をほんとうに愛したよね。誰もあいだに入れないくらい。でもあなた、他の人を愛した。私を手放した。私の希望のすべてをピシャリと絶ったよ、あなた……とまぁそんな感じ?

キナ・グラニスの構成の妙

前の段でもいいましたが、これらのブロックをどう構成するかがその歌手のカバーの価値を左右しているところがあると思います。

この記事冒頭にリンクしたキナ・グラニスがうまいのは、最も有名と思えるうえ人々の記憶にあるであろう「ユー・アー・マイ・サンシャイン……」のブロックを1コーラス目にもってきて、それから「ジ・アザー・ナイト・ディア……」のブロックへつなげています。そのあとはまた「ユー・アー・マイ・サンシャイン……」のブロックを連ね、短くキュートにコンパクトにおいしいところをまとめています。有名でキラキラした黄金のフレーズと、夜のせつなくほろ苦い夢を描くブロックのみで構成したのです。私が「執拗」とか「怨念めいている」と感じたブロックを排除している。歌詞のもつ情景やヒトの感情に対して非常にセンシティブ。鋭い美意識の持ち主ではないかと思いました。

後記

歌詞や音楽の段落をどう構成しているか。『You Are My Sunshine』数多のカバーを鑑賞する際のおもしろみのひとつとしてはいかがでしょうか。

一番有名な歌い出しは2コーラス目だったのは意外でした。他のブロックが未練がましく悲痛なのも意外。そう、実は失恋ソングだったのですね。なんて括るのもデリカシーがない?

コードはムチャ簡単で、3コードで弾けます。Cメージャー調だったら、C、F、Gのみっつですね。男性ボーカルはEかFくらいのキーでやると無難みたいです。キナ・グラニスはB♭でパフォーマンスしています。

歌い出しはCメージャーだったら「ソ・ド・レ・ミーミー」。「ソ→ド」4度跳躍上行での歌い出し。この音形はポップス名曲をみていくとけっこうよく出会う音形な気がします。その曲がどんな調性なのかをイッパツで感じさせることができる音形なのでしょうね。それが安心や愛着につながる。ゴールデン・ポップスの決まり手のひとつかもしれません。

青沼詩郎

リンク

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Wikipedia > ユー・アー・マイ・サンシャイン (曲)

KINA GRANNIS オフィシャルサイト

『You Are My Sunshine』を収録したJimmie Davisのコレクション『DON’T TAKE MY SUNSHINE AWAY VINTAGE HILLBILLY BLUES AND BALLADS 1932-1949』(2017)

『You Are My Sunshine』含む『Pine Ridge Boys The Very Best Of』

ご笑覧ください 拙演