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音の肉体性 米津玄師『STRAY SHEEP』を聴いて

この荘厳なトラック数、音色数を持ったアルバムの楽曲たちをあえて生楽器のバンドや、さらには弾き語りで表現するのも「映える」だろうと思う。『STRAY SHEEP』ラストナンバーの『カナリヤ』をほぼ生楽器の音で描ききっていることから、米津玄師の「音」の肉体性への思いを私は感じる。
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映画『Cocktail』サントラ 『Don’t Worry, Be Happy』Bobby McFerrin

『Cocktail』サントラで特筆したいのがBobby McFerrin『Don't Worry, Be Happy』。これ、楽器を一切使っていない。完全ナマオトオンリーのひとり多重録音だ。新型ウィルスの流行と巣ごもり活動の隆盛で多重録音する人、その発表や発信が一気に増えた印象があった先の春〜ゴールデンウィーク前後だったけれど、そんなのよりもずっとずっと前にBobby McFerrinはこんな芸当をやってのけた。アメリカのヒットチャートで楽器を一切使わない曲が1位になったのは初めてのことだったそう。
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30年を越えたジッタリン・ジン『夏祭り』

1980年代と1990年代のちょうどはざまにいて、なんだかすごく、何かの黎明期のような気がする。幼かったから、当時の空気をあんまり私は記憶していないしわかっていなけれど、そんな気がするのだ。なんというか、とっても豊かで自由で奔放で楽しい。アカ抜けてもいるし、いなたく(いなかっぽい。いもっぽい)もある。とにかく私はこのプレイリストをすごく気に入ってしまった。
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34歳の白地図 尾崎豊『十七歳の地図』に寄せて

倍も歳を食った中年が、十七歳の若者の歌とようやくちゃんと出会った今日からおよそ37年前のこの時期、ちょうどその作品のレコーディングが走り出したところだったのだ。生きていれば、尾崎豊は54歳。26歳で亡くなったその人生の倍くらいの時間があったら、彼は何をやっただろう。それこそ、34歳の頃には何を? …ぞっとする。私は未だに青っ洟たれである。