長野五輪とウッチャンのモノマネ
私の冬季オリンピックの記憶として強いのは1998年の長野オリンピックです。
記憶といってもあるのは、スキージャンプで活躍した選手・原田雅彦さんが“ふなきぃ〜〜”といって顔をぐしゃぐしゃにして涙ぐむっぽい素振りをカメラに向かってみせたことの記憶です(“ふなき”は、同じくスキージャンプ選手の船木和喜さん。原田さんが仲間に呼びかけて感動を嘆くせりふだったのでしょう)。
原田さんの様子を、コメディアンのウッチャンナンチャンの内村光良さんがモノマネするのをコメディ番組で観た記憶があります。小学生だった私はウッチャンナンチャンあるいは内村さんの出演するお笑いやバラエティ番組を好んで観ました。『笑う犬の生活』という番組もあり好きでした。内村さんによる原田さんのモノマネが放送された番組は“笑う犬”だったかな? いや、違うかも。
ところで作曲家の村井邦彦さんは、ロック・グループ(と私は勝手に敬意をもって表現させていただきます)の赤い鳥ほかに数多の秀逸な曲を書いています。
白鳥英美子さんと芥川澄夫さんによるボーカル・デュオのトワ・エ・モワも『或る日突然』など村井邦彦さんの秀でた曲を歌ったアーティストです。
1972年の札幌オリンピックは私は生まれていないので一次的な体験はまったくないのですが、村井邦彦さんが作曲しトワエモワが歌った『虹と雪のバラード』というこれまた壮麗でピシっとした意匠の素晴らしい楽曲がテーマソングになっていると最近知りました。
『虹と雪のバラード』作詞者の河邨文一郎さんは私があまり目にしたことのない作家名でしたが、整形外科医であり詩人である(かつ北海道の出身者、居住の人であった模様)とのことです。ザ・フォーク・クルセダーズでも活躍し、作詞者であり精神科医でもある北山修さんを思わせるユニークな個性・キャリアです。能力や技能や感性をいろんな道に応用し(というか分け隔てなく観念的にとらえ)、分野をまたぎ平行して人生を豊かに渡るお手本のような生き方かもしれません。
トワエモワ 虹と雪のバラードを聴く
作詞:河邨文一郎、作曲:村井邦彦、編曲:小谷充。トワ・エ・モワのシングル、アルバム『ユートピア』(1971)に収録。
シャクシャクとアコースティックギターやハイハットがきらびやかです。
サビをオクターブ違いで女声と男声がユニゾンします。のびやかでおおらかな二人のボーカルの響きがよく出ており、このパターンでいくものと思わせておいて、後続のサビではユニゾンでなく男声が女声の下ハモに行きます。オクターブのユニゾンのときよりも、男声パートは音域・ポジションがメインボーカルの女声に近づき、密集感と緊張感を高めるのです。最初のサビと後続のサビで緊張感を演出し分けていて巧みです。最後まで何が起こるかわからないオリンピック、競技のドラマ展開、ライブ感を思わせます。
ストリングスなども後半にいくほどもの忙しくするのを察します。バイオリンが1000の手数を繰り出すように滑り、雪を散らせます。
トリプレットのバラードの曲調がタイムレス、時間を超える耐久性を感じさせます。トリプレットはときにもったりとした粘度を強調もできますが、トワエモワの『虹と雪のバラード』は洒脱なかろみを備えています。女声と男声両方が活躍するところがより万人性を強調・補強しており、長く歌われるものづくりを意図しそれが成功している印象です。小谷充さんの編曲の良さはもちろんですが、村井邦彦さんの作曲はロングライフなものばかり。ずっとあとの時代に聴いてもおしゃれで垢抜けた印象、なのに歌いやすく洗練されたメロディが多いように思います。
ジャッキー吉川とブルー・コメッツ
トワエモワの1998年バージョン
青沼詩郎
Toi et Moi KING RECORDS サイトへのリンク
トワエモワ ユバーサル・ミュージック・ジャパン サイトへのリンク
『虹と雪のバラード』を収録したトワ・エ・モワのアルバム『ユートピア』(オリジナル発売年:1971)
『虹と雪のバラード』を収録した『ゴールデン☆ベスト ジャッキー吉川とブルーコメッツ』(オリジナル発売年:2009、再発売年:2019)
『虹と雪のバラード (’98 Version)』を収録した『GOLDEN☆BEST 白鳥英美子 with トワ・エ・モワ』(2009)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『虹と雪のバラード(トワ・エ・モワの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)