ライブ映像 フジフジ富士Q

かっこよくて素敵で黙って見入ってしまいます。右のリズムギターが山内総一郎、左がカウンターのギターで伊東真一(HINTO)のサポート。ショートディレイが効いています。キーボードの金澤ダイスケが多様なトーンを使い分けて演奏しながらハモリを歌っています。サビのピアノのストロークとカウンターラインが目立っています。ドラムスが派手で素早くて的確で激しくズバ抜けています。東京事変でも活躍する刄田綴色ですね。ベースの加藤慎一の柔和な表情。このテンポで驚異的なダウンストロークの連続ピッキングをメロでみせています。アウトロのキーボードのオルガントーンの演奏に気持ちが高まります。2010年7月17日、富士急ハイランドでの映像。

曲について

フジファブリックのアルバム『MUSIC』(2010)に収録。作詞:志村正彦・加藤慎一、作曲:志村正彦。

フジファブリック『会いに』を聴く

スコンスコンと気持ちよく破裂するようなドラムスのイントロ。ナインスのコードの響きバーン! ピアノのメジャーセブンスの響き。ベースの熾烈なダウンピッキングの連続。ギターのブリッジミュートも伴走します。Bメロでギターの音色に空間が出る。ボーカルもウェットになります。サビでメインボーカルをダブっています。1オクターブ下にもユニゾンボーカルがいます。山内総一郎のボーカルは声質とピッチの良さに高い魅力を感じます。

2コーラス目Aメロでベースがハイトーン。折り返しで復帰。ますます活力します。サビでキックの4つ打ち、ハイハットの16ビートをこのテンポで聴くと32ビートに聴こえます。そうそうさらりとやれるテンポではありません。達者です。ギターのメインの下行音形リフはダブっている感じがしますね。hum~とコーラスするボーカルがエンディングできこえます。Ⅳの和音でフィニッシュ。オルガントーンのサスティンが長く残ります。

歌詞

“まとまっていない気持ちだけれど 届けてみたいから”(フジファブリック『会いに』より、作詞:志村正彦・加藤慎一)

ここはボーカルのメロディの動きが緩慢になるところ。この気持ちはなんなのか、表現しあぐねている。けれども届けたい想いでいる。疾走する曲調が迷いを振り解きます。そしてサビに至るのです。

“君のいる所に会いに行くよ 会いに行くよ 君の住む街に会いに行くよ 君に言葉 持って行くよ”(フジファブリック『会いに』より、作詞:志村正彦・加藤慎一)

“会いに行くよ”はこの曲の初期の制作段階で存在した言葉だといいます。作詞が志村正彦の部分でしょうね。それ以外がベーシストの加藤慎一の作詞のようです。“会いに行くよ”に至る主人公を抱く情景、その五感を発想したのかもしれません。普遍の語彙で素直な態度が描かれていて好感。曲を爽やかで清涼なものにしています。

“バイク横切って 風と匂いが あの日の風景 思い出せてくれた 間違いないよ さらに足は進んで はずんだ呼吸にニヤけちゃって”(フジファブリック『会いに』より、作詞:志村正彦・加藤慎一)

自分の体感覚が想像を超えると笑ってしまう(ニヤけてしまう)ことがあります。驚きと笑いは近いところにあるのです。もともと心に持っていた風景に確信を持っていた。その景色を自分は目指してきたのです。それは間違っていなかった。そちらへ向かって、足が動いて体が近づく。夢中になっていたのかもしれません。自分の体がリアクションしている。呼吸がはずんでいるなんて。はずませるつもりはなかったのだけれど、自然にそうなってしまった。気づいたら、呼吸をはずませていたのです。そんな自分に気付いた時、自分がそんな状態になっていること自体が面白くて笑ってしまう。想像もしなかった自分に私はなりたいし、過去の自分が思いもしなかったことを起こしたいと私は思っています。だから、思わぬ自分に出会えたときは嬉しいのです。たとえばこの曲の主人公のように、呼吸をはずませている自分を発見したとき。私もニヤけてしまう気がします。体が勝手に動いてしまったのでしょう。

感想

『会いに』を収録したアルバム『MUSIC』はたいへん私のお気に入りです。テレビドラマ『モテキ』主題歌の『夜明けのBEAT』も収録しています。志村正彦が生きていて、たくさんの曲を進めていたことでしょう。それを志村正彦を欠いたメンバー、制作陣で完成にこぎつけた。メンバーが同じビジョンを持ち、志向を共有していたから辿り着けた境地の記録が『MUSIC』ではないでしょうか。

特に『会いに』を形にできたことは、結果として、現在までの彼らの心の支えになった部分があるのではないかと私は想像しています。志村正彦が逝去したあとのフジファブリックの作品の中で『徒然モノクローム』が私はとても好きなのですが、これも加藤慎一の作詞だと最近知りました(作曲:山内総一郎)。『会いに』の制作で走り抜けた道で鍛えられた足で、のちの道を歩いたに違いないのです。たとえばその一つの成果が『徒然モノクローム』で、『会いに』を含めて私は何か響きあうものを感じています。新しい自分に『会いに』行く。そんな曲なのかもしれませんね。

青沼詩郎

フジファブリック 公式サイトへのリンク

フジファブリック『MUSIC』ライナーノーツ

Wikipedia > フジファブリック presents フジフジ富士Q -完全版-

『会いに』を収録したフジファブリックのアルバム『MUSIC』(2010)

『会いに』ほか多くのゲストとの共演によるフジファブリックのレパートリーを収録したライブ映像『フジファブリック presents フジフジ富士Q -完全版-』(2011)

ご笑覧ください 拙演