まえがき

くるりが主催する京都音楽博覧会2025に、佐野元春 & THE COYOTE BANDの出演が発表されました。

『ソングライターズ』という番組に、佐野さんとくるりの岸田繁さんが出演していたのを思い出します。検索してみると2010年頃の夏の放送でした。確か私は再放送で観た気がします。

岸田さんが出演した回の少し前には、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんも出演しており、そのASIAN KUNG-FU GENERATIONも“京都音博”2025に出演します。

ソングライターズは佐野さんがホストになって、毎回ソングライターを招いて話を聞き出す流れ・趣旨になっていて、観客が眼にする普段のそのアーティストのステージ上のパフォーマンスはアーティストの思念・思考・思想の氷山の一角であるのを思い知ります。録音作品、著作物としての楽曲の完成に至るまでの無尽蔵な制作過程のストーリーがゲストと佐野さんふたりの対話によって展開される番組。夢中になって観たのを思い出します。

そんな番組『ソングライターズ』で数多の秘話を引き出した佐野元春さんのセカンドシングル曲が『ガラスのジェネレーション』です。

佐野元春 ガラスのジェネレーション 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:佐野元春。編曲:佐野元春・伊藤銀次。佐野元春のシングル(1980)、アルバム『Heart Beat』(1981)に収録。

佐野元春 ガラスのジェネレーション(アルバム『Heart Beat』収録)を聴く

せつないのに熱くて強靭なのに脆く壊れてしまいそう。

各拍の表を強烈に強調するダウンビートの直進力たるや。ピアノのストロークの印象が前に出ています。オクターブ上くらいの音域にシンセのミュージックチャイムかベルのような感じのトーンも重なっているでしょうか。ホーンやストリングスの音色もシンセで表現されているようか。この諸シンセトーンの織り重なりが楽曲の魂たる直情に寄り添うオトナ感。

ドラムやベースの音の輪郭がはっきりしています。ベースなどはりつくような音色の体躯でグリグリとグルーヴを押し出すプレイがアグレッシヴです。

エレキギターの音色が効果的で、ジャミィーというのかギュィーンとでもいうのか、Bメロみたいなところで強烈にたった1発のストロークを伸ばして止める!これだけの挙動で強い衝動や青さを表現するからすごい。A-B-A’構成とでもいうのか、歌い出し、そして戻ってくる「ガラスのジェネレーション」の主題が高らかです。

間奏のサックスソロも音楽的な清涼感を吹き込んでいて、このシンプルで直上的な音楽性にこの風通しを確保する展開は必須だとおもえます。個人的にはRCサクセションの傑作の数々のようなサウンドを思い出しもします。

Fメージャーキーで、鋭く叫び上げる歌唱が圧巻。

エンディング手前でA♭に転調するところが劇的。「ガラスのジェネレーション」の主題を歌う旋律の絶対的な音程はむしろ転調することで低くなっているのに、曲の衝動性を強く印象付けるキラーフレーズ「つまらない大人にはなりたくない」を歌うところで、楽曲中リードボーカルの熱量と音程の絶対的な高さが最高潮に達しているのです。この構成、アレンジやサウンド、作詞作曲含めてブラボー。

佐野元春 & THE COYOTE BAND つまらない大人にはなりたくない

再定義の意図で、佐野元春 & THE COYOTE BAND名義で、曲名を『つまらない大人にはなりたくない』とし、2025年1月にリリースしています。

重心が下がり安定しつつ、エレキギターのザクザクしたコシと疾走感、シンセのはなやか・きらびやかな風が通りぬけ、ピアノの高い音域のカウンターメロディが原曲の繊細さを再現するよう。儚さを叫び上げるサスティンと歪みの強いエレキギターも示唆的です。Fだった原曲のキーをCにとらえなおし、再生あるいは転生したガラスのジェネレーションは「つまらない大人にはなりたくない」との思念をより丸裸で直上的に突きつけます。こちらもブラボー。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ガラスのジェネレーション

参考歌詞サイト 歌ネット>ガラスのジェネレーション

佐野元春 公式サイトへのリンク

『ガラスのジェネレーション』を収録した佐野元春のアルバム『Heart Beat』(1981)