KinKi Kidsのシングルとして
KinKi Kidsが歌った曲として私は認知していました。2001年11月14日シングル発売、2002年12月26日発売の『F album』に収録されています。1997年に『A album』を出してから、アルファベット順のタイトルでアルバムを出している彼ら。FはAからおよそ5年後、6枚目のアルバム。『カナシミ ブルー (New Mix)』(作詞・作曲:堂島孝平)も収録されています。
アルファベット順のアルバムは2016年『N album』まで出ています(後記:2020年12月23日『O album』を発売、2023年12月13日『P album』を発売)。アルバムタイトルをつける側としては悩むことがなさそう。ベストアルバムなどには例外があります。
堂本剛が主演したドラマ『ガッコの先生』の主題歌。当時、私は放送を観ていました。記憶がオボロですが、アツい先生のお話だったかと。共演者が竹内結子でした。
「KinKi Kidsらしさ」というものを特定しうるのかわかりませんが、彼らを思い出すときのイメージとして、デビュー曲の『硝子の少年』(作詞:松本隆、作曲:山下達郎)の印象が強く残っています。あの儚い情動の機微を思うと、彼らの持ち曲として『Hey! みんな元気かい?』はいくぶん特異に思えたのです。悪目立ちするとかそういう批判ではありません。常に新しいことに挑戦する意欲、その矛先が、こういった、どこかフォークの匂いのするほうに向いたということが、当時の私には意外に思えたのです。
作詞・作曲のYO-KING。真心ブラザーズのメンバーです。最近私はこのブログでYUKI『歓びの種』を取り上げた記事を書きましたが、ふたりはご夫婦だそう……という私的なつながりはともかく、ミュージシャン、表現者としても強く惹かれ合ったのであろうことを勝手ながら想像します。ご両人とも、すばらしい表現で私の音楽道楽ライフを豊かにしてくれます。
曲や歌詞
YO-KING氏のまっすぐな音楽への態度がそのまま出ている印象です。そもそも、彼のそういうところを見込んでの依頼だったのかもしれません。結果、KinKi Kidsの音楽、彼らのキャラクターそのものにまで幅を与え、以後の活動にも影響を与えたかもしれませんね。
“悲しみの涙で育った大きな木を どこまでものぼってゆけば” (『Hey! みんな元気かい?』より、作詞:YO-KING)という歌詞のフレーズに対して、ベースが順次下行していきます。“のぼって” と歌う瞬間には詞に呼応してか、完全4度(転回すれば完全5度)ルートが跳躍します。悲哀との遭遇を繰り返しながらも地道に前へ進みつづけ、徐々に世界が広がり、高みへ至り、視界がひらけていくような情景を想像します。名曲のにおいのする王道なコード進行ですが、Ⅰに解決する直前にⅦ♭のコードを用いています。実直な曲想にロックっぽいフックが加わりますね。
BメロのアタマはⅥmの短和音のキュッとした響き。Ⅱ7を用いてⅤへのつながりを強めます。そしてサビへいく。サビはAメロと同じコード進行。「これだ!」「キタ!」といった具合に、知っている風景が蘇った・望んだ場所に帰ってきたような気持ちよさがあります。
YO-KINGバージョンでは彼がハーモニカを吹いています。彼のアルバム『IT’S MY ROCK’N’ROLL』(2003)にセルフカバーが収録されています。Cメージャー調の中でハーモニカの「シ♭」の音を吹いているのが特徴です。「F」キーのテンホールズ・ハーモニカでしょうか。
ちなみにKinKi KidsはAメージャーキーでパフォーマンスしています。YO-KINGバージョンのCメージャーキーだとグッと音域が高くなりますが、YO-KINGらしいボーカルのテンションが曲の骨子のたくましさを爆増させます。
KinKi Kidsバージョンはイントロのリフがフレンドリーですしお二人のボーカルも兄弟や友達に話しかけるような響きで大衆性を帯びます。YO-KINGのセルフカバーといずれも素敵です。
YO-KINGバージョン
定位を分けた2本のエレキギター。コードを鳴らします。ベースとドラムスがシャッフルの軽快なグルーヴ。間奏はハーモニカ。ブルーノート、枯れたサウンドが効いています。ライブで即再現できそうな編成。私も友達を誘ってプレイしたくなります。
青沼詩郎
KinKi Kidsのシングル『Hey!みんな元気かい?』(2001)
KinKi Kids『F album』(2002)
YO-KING『IT’S MY ROCK’N’ROLL』(2003)
ご笑覧ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Hey! みんな元気かい? ギター弾き語りとハーモニカ』)