安酒場で無礼講
シングル、コンピでリリースされている曲。楽曲のキーが微妙。Gかな? A♭? 回転数などの関係でしょうか。
ギターのリフがストーンズ印で、特にⅣの和音でサス・フォーを用いたときに、その主調のダイアトニックスケールにはないⅶ♭があらわれます。そのキーの主音(ⅰ)の付近をうろうろするヴァースのメロディ。オレをなぐさめてくれよ、安酒場で出会ったネェちゃんよ……みたいな感じでしょうか(雑すぎる歌詞の解釈で失礼します)。本命の相手、あるいは夢や理想にむかうもそこに今この瞬間は届けないでいるウジウジ感が実はローリングストーンズの世界的な愛嬌なのかもしれないと思いました。俺らなんてそもそも弱いウジウジした存在なんだから、だからこそカッコくらいはつけて、虚勢張って見栄張っていこうぜ!みたいな愛もとらえようによっては彼らの魅力なのかなと。ヴァースのボーカルメロディのリズムにしても、表拍をすかしにすかすような解像度のリズムが特徴です。安酒場での酔っ払いの際限なき戯言でしょうか。無礼講ですね。
Honky Tonk Women The Rolling Stones 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Jaggar-Richards。The Rolling Stonesのシングル、アルバム『Through The Past Darkly (Big Hits Vol.2)』(1969)に収録。
The Rolling Stones Honky Tonk Women(アルバム『Through The Past Darkly (Big Hits Vol.2)』収録)を聴く
よってらっしゃい、と心のさだまらない健忘自失者をみちびき入れるみたいなカウベル。牛にでもなったつもりで踏み入れる安酒場。オープニングが静かです。エレキギターの入りかたもなんだか、ど深夜に火を囲いながらつらつらっと始まるみたいな熱量。ですがリズムの作り方があまりにも秀逸です。表や裏にアクセントをひょろひょろとうろつくみたいにトリッキーに推移させながら、平然としたポーカーフェイスなドラムスと一緒に紡いでいきます。ヴァースがひとくだりすると急にボーカルの熱量も上がってきます。
ベーシストがおなじギャラでは取りすぎではないか? というくらいにヴァースではまるまる抜けて、コーラスでやっと入ってくる。ここでも、音を鳴らす時間的な幅をごく絞っています。重苦しい雰囲気は安酒場に合いません。このベースのバランス感が本曲の自由な気風をつくっています。
ボバボバ……とやぶけたスピーカーコーンがぶすぶすいっているみたいな独特のギターサウンド、これぞなサウンドと抜群の相性なのがサックスの音色です。ブヒブヒと圧迫をおしのけて震えるリードのピタっとした密着感、管ごと震える存在感がエレキギターのブスブスサウンドと悪だくみ。石を投げろ!火をつけろ!そんな高揚した気分をくれます。
コーラスは主旋律がどれなのかよくわからない感じでかなり高い音域のボーカルが重なりあいます。きっぱりした曲サイズでジャッジャーンと決めて終わってしまいますが、ライブだったらもっとコーラスを繰り返してくれても盛り上がれそうです。ブルースをもっとくれよ。
とろとろして落ち着いていたかまどに、徐々に薪が加わり火力をましていくようなじわじわとした、しかしスムースで確かな激化と高揚があります。
ホンキー・トンクをひたすら安酒場としてみましたが、大衆的な労働者一般の日常の延長にある憩いの場、あるいはハメはずしの場という感じのニュアンスもありかもしれません。ブルースとはそういうものよ、という気もします。
青沼詩郎
参考Wikipedia>ホンキー・トンク・ウィメン、スルー・ザ・パスト・ダークリー (ビッグ・ヒッツ Vol.2)
参考歌詞サイト Genius>Honky Tonk Women
The Rolling Stones | Official Websiteへのリンク
『Honky Tonk Women』を収録したThe Rolling Stonesのアルバム『Through The Past Darkly (Big Hits Vol.2)』(1969)