まえがき

カノン進行っぽくもあり、ねっとりとした6/8拍子系の渾身のバラードといったところでしょうか。沢田さんのボーカルの澄み渡る高音域が純真です。 タイガース最後期の作品のひとつとはいえ、『ラヴ・ラヴ・ラヴ』を収録したアルバム『THE TIGERS AGAIN』の次にはアルバム『自由と憧れと友情』のリリースがあります。そちらが解散前最後のスタジオアルバムということになるようです。 また『THE TIGERS AGAIN』はオリジナルアルバムとは言いがたく、既発表のシングルAB面を集めたコレクションあるいはベスト集というのが実質のところのようです。しかしシングル曲集であるが故の音楽的な内容の充実・輝きがうかがえるのもまた事実でしょう。 ちなみに、タイガースはアルバム作品がほとんどサブスクで解禁されていないように見受けられます(2025年7月時点)。私の敬愛するグループ、ザ・スパイダースに至ってはシングル曲すら未解禁の模様です。GSブームのハイライトシーンは、当時のみなさんの記憶の中にだけにある部分も多いようです。タイムリープができるものなら、覗いてみたい時代です。

ラヴ・ラヴ・ラヴ ザ・タイガース 曲の名義、発表の概要

作詞:安井かずみ、作曲:村井邦彦。ザ・タイガースのシングル『君を許す』(1969)、アルバム『THE TIGERS AGAIN』(1970)に収録。

ザ・タイガース ラヴ・ラヴ・ラヴ(シングル『君を許す』収録)を聴く

ジュリー(愛称で失礼)のリードボーカルが澄み渡り、純真で透明で……なかなかポジションが高くハナがあります。もしクラシカルボイスで分類するならテノールか。オペラなら主役ですね。余計なビブラートなどもなく、至ってまっすぐなのです。ささくれもなくなめらか、シルキーでスムース。それでいて、叩いてもつぶれなさそうな魂の太さ。GSの王者と謳われるタイガースの玉座に据えられた声のテクスチャとして風格があります。歌唱の質の面でも、もはや、ブームで人気で存在を押し上げられた「鳴り物」のような存在からひとかわふたかわと剥けたような貫禄を感じるのです。それでいて、生まれたばかりかのように初々しい。耳福です。

1969年3月頃に、リードギタリストの加橋かつみさんが脱退しているはずなので、この楽曲でリードギタリストを担当したのは森本太郎さんでしょうか。イントロからコヨコヨとワウのペダリングであおったようなサウンドが聴こえてくるし、歪んだ伸びのあるトーンのリードプレイも流麗です。

イントロのバンドのサウンドが明けると、バッサリと各トラックが息を殺し、ピアノとオルガンと歌声だけがステージにいる様相。場面の転換が劇的です。ジュリーのツヤのある声も映えます。

ベースの浮遊したまあるい音色と伸び・コシがすごい。どういう楽器と機材を用いたらこういう音になるのでしょう。ビートルズのポールのベースサウンドも思い出させるキャラクタです。浮遊感はサウンドのみでなく当然プレイによって醸し出されるもの。太いバンドの音像を確保しながらも自由で多動なのです。ドラムは右の方に定位が寄っていますがベースの太さにも起因してか左右の安定感は良好です。

サビのみんなで歌う、声のレイヤーの厚さがすごい。熱量があるのです。

エンディング前で長二度上に転調。リズムも劇的に揺さぶりながら新しい調のドミナントを打ち付けます。転調後はもうなんだかドラムのキックの頻度がすごいしオルガンが何をしているのかわからないくらいコシャコシャとかきまわすようなサウンドに、歌声のリフレインで理性を保ちます。そのままフェイドアウトがちょっときつめ・はやめでおしまい。

この楽曲はバンドの解散から遡るほうにかぞえて2番目のアルバム『THE TIGERS AGAIN』の最後を飾る曲です。そのあとにもう一枚アルバム『自由と憧れと友情』が出て、解散前のオリジナルアルバムはおしまい。あとは実質の解散コンサートin 武道館ののちライブアルバムが出るくらいでしょうか。有終の美を象徴するような6/8拍子系のバラードです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ザ・タイガース

参考歌詞サイト 歌ネット>ラヴ・ラヴ・ラヴ

ザ・タイガース ユニバーサルミュージックサイトへのリンク

『ラヴ・ラヴ・ラヴ』を収録したザ・タイガースのアルバム『THE TIGERS AGAIN』(1970)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】最後期に放つ”愛ある限り”…… ラヴ・ラヴ・ラヴ(ザ・タイガースの曲)ギター弾き語り』)