まえがき 実在するシャローナさん
デデ・ディディ・デッ、ディッ……オクターブを行き交うリフと目を覆いたくなるようなおおげさな歌唱のクセつよ感がたまらない名曲『My Sharona』はお笑い番組の制作陣や芸人さんに重用されたように思います。
余談ですが、収録アルバム『Get the Knack』の『My Sharona』から数えて3曲目に入ってる( 『Lucinda(ルシンダ)』(1979年6月)がAC/DCのリフ名曲『Back in Black』(1980年7月)に似ています。AC/DCはThe Knackを参考にした……かも?? ひょっとしたら、ひょっとすると……
このファーストアルバムの次のアルバム『…But The Little Girls Understand』(1979)のジャケ写の被写体が実在するシャローナさんご本人であり、The Knackの作曲メンバー(バンドのギタリスト:バートン・アヴェール)が実際におそらく惚れ込み、楽曲『My Sharona』の主題かつモチーフにした人だそうです。シャローナさんは現実のやり手の不動産業を営む方のようですね。自分が楽曲の主題やモチーフにされたことも、自分の人生の追い風としてうまく味方につけているように思えます。
My Sharona The Knack 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Berton Averre、Doug Finger。The Knackのシングル、アルバム『Get the Knack』(1979)に収録。
The Knack My Sharona(アルバム『Get the Knack』を収録)を聴く
イントロやヴァースで、リフや歌唱を強く印象付ける秘訣、ひとつはハイハットやシンバルの使い方が抑制的であることかもしれません。あんまりむやみに金物を鳴らしていないのです。それによってか、ひとつひとつのビート、ストロークの音像のタイトが保たれている。ゆえに、リフのシェイプも歌唱の輪郭もくっきりとリスナーに伝わってきて、強く印象づけることに成功しているのです。
クリックもなしにバンドで全員で収録しているようなツッコミ具合を感じるテンポの揺らぎ。キモチいい。世界中のミュージシャンにこの鼻息の荒さを今すぐ見習ってほしい。できるもんならやってみろ。ついてこられるもんならついてきてみやがれ!と言わんばかりのイキオイを感じます。案外曲のサイズはデカくて、ところどころ、テープをつないだりクロスさせてるのかななんて思う編集点風の箇所もあるかもしれませんが私の気のせいかもしれません。どちらにしても生演奏でこの記録物を征服しきっているところが素晴らしく私の好むところです。
ギターソロがいいですね。あらためて聴いて唸ります。音形・リズム形をリフレインしながら音程を並行移動させていくようなフレージングなど、このギタリストの作曲能力の確かさを思わせます。ギターソロに傾倒するときに、バッキングのギターをオーバーダブで追加したりしないところも潔くて素晴らしい。また歌唱のすきま、ドラムがフィルインするよいなタイミングいちいち右に振ったリードギターもオカズ的に動きを加えてくるところもいい。このギタリストの腕前と気概が好きです。
長い長いギターソロは数えたら48小節くらいはあるようです。大仰な1拍3連のドラムフィルで恒常パターンに復帰、ボーカルの「ホウゥーーーーーーン」みたいな長い鼻息(?)がダブルで重なってきて「My Sharona」! 3回唱えてバチっと終わる。ギター大好き、バンド最高!が伝わってくる。最高です。
エンターテイメント界隈の人がこの楽曲の濃ゆい面構えに惚れ込む・惹かれるのもわかる気がするなぁ。
青沼詩郎
『My Sharona』を収録したThe Knackのアルバム『Get the Knack』(1979)