続きを読む 井上陽水『クレイジーラブ』異端と愛の幅 溌剌としていながら聴く者に対してトリモチのような粘性を発揮する歌声とは対照的に、井上陽水の歌詞の世界はときにドライでがらんどう。死んだ魚のまなざしで刺す無常の様相が鋭い。愛も幸福もさまざまで、日常こそ異端への道。
続きを読む 映画『かもめ食堂』と『ガッチャマンの歌』 “誰だ 誰だ 誰だ”はサチエ・ミドリ・マサコであり、お店を訝しんで覗くヘルシンキの婦人3人組にも重なる。奇抜で稀有なめぐりあわせを、素朴な質感と可憐な茶目っ気でお盆に載せる態度が『かもめ食堂』の素晴らしい魅力である。
続きを読む ヘドバとダビデ『ナオミの夢』幸せの観念、大衆歌は過渡期の薬効 言語の隔たりをこえるとき、観念や抽象の度合いが高まる気がします。“Come back to me”と唯一の英語のライン。戻って来てほしい存在の素性は特定の個人かもしれませんし、幸せそのものの象徴にも思えます。ヘドバとダビデ『ナオミの夢』と、歌手名と曲名が並ぶとインパクト。
続きを読む BだかAだか『気ままなシェリー』(アウト・キャスト) GS沼と藤田浩一、連想の音楽たち B面好き・アルバム曲好き。GSのずっと巡っていられる沼感よ。当時の流行の中の人らがその後腕をふるい多くのヒット曲に関わったケースがままあるのを思うと、やはり表裏一体なんだなと。
続きを読む never young beach『あまり行かない喫茶店で』 刹那の匂い、大衆の記憶。 ある時代、ある社会で強く匂った様式、文化。当時の人はたぶん「匂っていた」のに無意識だ。時や場所を離れてみるとその個性が際立つ。奇抜や独創は、調和や普遍の裏返しであるのを思う。
続きを読む チューリップ『神様に感謝をしなければ』 雨の表情と忘れる愛 「忘れる」は「気にしないで済むようになった」というか「受け入れることができた」というか。「忘れた何か」への認知は生きている。せつなくて祈りにも似た曲の響きの正体なのだと思う。好きな歌である。
続きを読む 小室等・谷川俊太郎のプロテストソング『おしっこ』 無防備のお互い 無防備ではじめて対等になれる? ヒトが知恵を持ち道具を用い、考えることもともなって伸長して……。「お違い」の認識を「お互い」に改めさせてくれるキーワード、そのひとつが「おしっこ」かもしれない。
続きを読む 小室等『のみくらべ』酒の飲み方と楽しい時間 ロックン・ロール調の刺激に民謡や音頭のような古典的な哀調、コミカル・ソングのような趣もあります。めまぐるしく表情を変え、娯楽作品として見習いたい点も多いです。何より、『プロテストソング』などの作もあり詞や主題への気骨を思わせる小室等さんの「ミュージシャン」として楽しさにあふれる幅の広い面を思い知らされた衝撃が大きいです。
続きを読む ダ・カーポが歌った『宗谷岬』 夏を望むアンテナ 最北端の地理・アンテナ状の地形は恩恵も災禍も含め万事への高い感性を秘めて思える。ハマナスの開花や流氷の時期とは。「夏を望む歌」は言い過ぎか? 私も自分の目で幅をもって観察してみたい。あと、味噌ラーメンたべたい。