バンドに入れる各楽器を、順番に演奏してひとりでみんな録っていく。多重録音を用いたひとりバンド制作スタイルで私はかれこれ17年間くらい曲をつくってきた。

この国でその制作スタイルの頂点にいるひとりが奥田民生だと思う。彼は私の憧れでありヒーローだ。

きのうも何気なく、加入している音楽のサブスクリプションサービスで彼の名前を検索してみた。昨日聴いた『風は西から』が良かった。それが収録されたアルバム『O.T. Come Home』ほかでも聴いてみようかと思いながら検索をかけたのだ。

ずらりと並んだ、彼の作品たち。そのすべてがこのサービスの配信に乗っかっているわけではなく、しばしば探しても聴けないものや、何かの権利関係の問題が非クリアなのかグレー表示になっているものもある。

スススとリストを下ってみると、際立ったジャケット絵があった。

一人の男性が描かれている。正方形に大きく、寄りで。描き込み、線が力強い。よく見るとその表現の本質は漫画の絵だ。

なんだか見たことのある画風だと思うのと同時に、ご覧いただいてわかるように下のほうに小さくクレジットが入っている。「雨瀬シオリ」。私の知っている名だ。

『ここは今から倫理です。』という作品の単行本を私は揃えて持っている(未完結だが)。雨瀬シオリの作品だ。こちらは倫理を教える教師と生徒たちの物語。本屋で一巻を見かけてジャケ買いならぬ「表紙買い」をして以来、続刊を買い足している。

話を戻すけど、先程の絵に描かれた男性はヘッドギアのようなものをしている。ラグビーのそれだろう。そう、雨瀬シオリが『ここは今から倫理です。』以前に連載を開始した、ラグビーを題材にした漫画『ALL OUT!!』。

この漫画がアニメになった。それの主題歌(エンディング)にスキマスイッチ『全力少年』が使われた。

有名な曲だと思う。コードにメリハリ、メロディに爆発力がある。歌心を刺激する印象的なポップチューン。カバーも存在する。

こちらは、かつてから私が知っていたオリジナルの『全力少年』とアレンジが違う。奥田民生プロデュースなのだ。冒頭の話に戻るけれど、「奥田民生」検索で引っかかってきたのだ。

知っていた曲なのに全然違う。奥田節全開である。絶対これ、彼の多重録音サウンドでしょと私は自分の知識経験からの推察を押しつけまくった。エレクトリック・ピアノはスキマスイッチの常田真太郎の演奏だろう。これが絡んで、奥田民生サウンドとナイスタッグしている。

ハーフブリッジミュートのエイト・ビートの押し出しがもう明らかに奥田民生弁である。歌い出しの声を奥田民生なんじゃないかと聴きまがう。イヤイヤ、大橋卓弥でしょう、スキマスイッチのボーカルは。そう、聴き進めばちゃんと大橋卓弥だ。でも、歌い出しには奥田民生ソウルが明らかに宿っている。ソウルかロックかブルースか知らん。プロデュースのチカラってすごい。

コードワークは再考(リハーモナイズド)されていて原曲との違いがある。奥田ナイズドとでも呼ぼうか。コードにも人格って出るのだ。

ドンカンドンカンいってる実直なドラムスはもちろん(?)奥田民生が演奏したものだろう。映像でその様子がうかがえる。Aメロパターンの3拍目ウラで鳴るスプラッシュシンバルが印象的なエフェクトになっている。

サビのオルガンサウンドも奥田サウンドに符号して歌メロを支える。

心が動きまくって洗濯物を干しながら夜にリピートして聴きまくった。

青沼詩郎

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