続きを読む 井上陽水『クレイジーラブ』異端と愛の幅 溌剌としていながら聴く者に対してトリモチのような粘性を発揮する歌声とは対照的に、井上陽水の歌詞の世界はときにドライでがらんどう。死んだ魚のまなざしで刺す無常の様相が鋭い。愛も幸福もさまざまで、日常こそ異端への道。
続きを読む 映画『かもめ食堂』と『ガッチャマンの歌』 “誰だ 誰だ 誰だ”はサチエ・ミドリ・マサコであり、お店を訝しんで覗くヘルシンキの婦人3人組にも重なる。奇抜で稀有なめぐりあわせを、素朴な質感と可憐な茶目っ気でお盆に載せる態度が『かもめ食堂』の素晴らしい魅力である。
続きを読む 小山田壮平『恋はマーブルの海へ』とRayonsのシンセサウンド、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の伏線 小山田壮平が配信シングルをリリース。 テレビ東京ドラマ25『直ちゃんは小学三年生』エンディングテーマ...
続きを読む ブッ壊す自由 映画『ファイト・クラブ』 ラブリーサマーちゃん『AH!』からきっかけをもらって 100人の村で100人がタイラーと同じようにふるまったら、その村社会はオワってしまうだろう。100人がやったらまずいことは、100人ともやってはいけないことだろうか? そんなわけはない。100人がやっても差し支えないことを100人がやってしまったら、それこそ村社会の終焉だ。
続きを読む サカナクション『新宝島』 作為のおかしみ カラオケビデオにしろ『新宝島』MVにしろサカナクションのソングライティングとアレンジメントにしろ、倒錯のおかしみがある。これを私は、彼らが仕掛けた作為と認める。そこが私にとっての彼らの魅力。サカナクションの存在を知っていつつも、私はこれまで、なんとなくすれ違ってきてしまっていた。今後も彼らの仕掛けるおかしみに期待。同時にこの期待感は、私の彼らに対する現時点での勘違いを発端とするものかもしれない。サカナクションを追っていくと、そこにまだまだ何かありそうな気がする。
続きを読む 映画『#ハンド全力』を観て 変化はグラデーション 熊本の震災と、その後、そして現在。それらは、すべてつながっている。どこにも切れ目はない。報道が関心を示さなくなったら、外部の人にとっては「切れて」感じるかもしれないが、そこで生きる人、その心はずーっとずーっと、「コンティニュー」。無段階に続き、絶えず変化したり現状維持に努めたりして光り続けている。だから、先程の「現在と過去をつなぐシーン変移」の演出は、あながちただの技法の話で終わらない。この映画で最も着目すべきテーマの象徴ではないか。
続きを読む 幽霊部員の小踊り Ray Parker Jr. 『Ghostbusters』 ときにくすぐったいような声の出し方、発声をはじめる瞬間の、2枚の声帯がゆっくりはじけてこすれるみたいなニュアンス。笑い声。ボーカリスト、レイ・パーカー・ジュニアの表現力に唸る私。シンセのかっちりした明瞭なサウンドを基調に、少し奥の方に左右に定位を分けてリズムとリードの歪んだギターが数本ダブってある。いかにも80年代全開で最高だ。