続きを読む ザ・ダーツ『ケメ子の歌』 彼女の素顔の謎 際立つ名詞「ケメ子」とスキャットの響きがクセになります。ダーツ版のケメ子がひどいのですがまるっと夢オチととれる余地も。スキャット元ネタのニール・セダカが爽快。GSの流行、『帰って来たヨッパライ』のヒットの影響も。
続きを読む デューク・エイセス にほんのうたシリーズ 『女ひとり』と旅したい京都 〜“恋に疲れた女”の、きもの姿〜 着物の色柄は主人公の女性の心の鏡かもしれません。どんないでたちなのか想像することは、同時にその胸の内を想像することでもあります。京都には津々浦々の文化が舞い降りる。
続きを読む 高石ともや 受験生ブルース 悲哀とは、離して見ること。 自分が当事者だと笑えないことも「時間が経つ」距離で客観が容易になります。高石ともやの底抜けに明るいパフォーマンスに温かい気持ち。歌詞のおかしみがジワジワ。シングル版の小ネタはWe Shall Overcome。
続きを読む 浅川マキ『かもめ』 未来の没む港町 主人公は、女の未来を奪い自分にもまっくらくらの未来を贈った結末か。港町は、いくつの人間の未来を吸い込んだのでしょう。別の機会に、港町を舞台にした明るい歌を取り上げてフォローを入れたくなります。暗い歌や物語、私は好きです。
続きを読む 岩崎宏美『すみれ色の涙』 現実の無情の滴り ブルー(青)に、現実の無情が滴り落ちると「すみれ色」に。一般と固有、淋しさの本質、平行調へつながるⅢ7、編曲:萩田光雄の妙技……知る・思うこと満載でした。原曲はジャッキー吉川とブルー・コメッツ。
続きを読む さとうきび畑 魂の衣擦れ “ざわわ”に込めた悲しみのリフレイン 鑑賞する、関連記事から知識を得るなどする都度、何度でも涙がにじんできます。“この悲しみは消えない”の通り。風の音、“ざわわ”がずっとリフレイン。時間の隔たりを増すばかりの史実。舞台は島でも、現実と地続きの歌。
続きを読む 島倉千代子『愛のさざなみ』のアゲのオチ 浜口庫之助のメロディ、なかにし礼の歌詞のロマン さざなみに似て上下する浜口庫之助メロディ、ささやかな食いのリズム・弱起モチーフ。なかにし礼の歌詞のロマン。島倉千代子の声の機微。演奏の妙はボビー・サマーズと彼のグループ。
続きを読む フニクリ・フニクラ 冒険心あおるCMソングの元祖 呪文みたいで可愛い「フニクリフニクラ」は登山電車「フニコラーレ」の愛称。変拍子っぽく聴こえる、小節線を無視したようなトリッキーなモチーフの割り付け、奇数小節フレーズ。ⅢmやⅤへの部分的な転調。サビ後半の転々とした和音進行と怒涛の同音連打「フニクリフニクラ」。登山鉄道の広報・宣伝の機能を満たし、主人公に想定上の相手役を配したアツいラブソングにもなっています。和音や調の進行にも起伏があり、音形もゆたか。ケーブルカーに乗った火山観光の冒険心をあおる秀でたCMソングです。ノリが良く親しみやすいメロディやリズムを持ったフニクリ・フニクラは「おにのパンツ」ですら許す器の大きい曲。
続きを読む 旅する歌い人・森山良子の一筆箋『この広い野原いっぱい』 かろやかな曲想というのが第一印象でしたが、普遍の風光明媚とロマンが理想高くうたわれています。あなたと私の関係に現実のリスナーと森山良子をあてはめても読めることから、彼女のファーストシングルとしてとてもおあつらえ向きという点にも鑑賞を重ねてから気づきました。飽きの来ない垢抜け感。当時の森山良子のジャズ志向をあながち無視したものでもない秀作。
続きを読む The Beatles『Eleanor Rigby』 不協和とシュールの寓意 シュールな歌詞の世界の手ざわりは硬質。哲学の問いのようでもあります。弦楽器のストロークやカウンターラインが奇麗。ボーカルと同時に横に流れ、ときに縦の線で不和を起こします。不協を背景に跳躍の歌唱は高度。空耳のおかしみは音楽の魅力に符合します。
続きを読む 坂本九『ともだち』 拡散のエナジー・バトン 印象深い低音下行はアコベに低域ブラスの合音。スウィンギーでエナジーがあり、ともだちに託した! のマイナーシックス・アドナイン。結ぶのでなく開くエンディングはむしろプロローグ。ともだちと前を向いて事を始めるための歌か。