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10-FEET『FUTURE』 心揺らぐリビング

『RIVER』は自分の中の風景と心象をクロスさせ、懐古の趣を引き金に感情が噴出する。こちら『FUTURE』は、「いま」の自分の嘆きに未来の自分がIt' All Right.と肩を組んで言ってやっている感じ。これがちょうど昨日今日とモヤついていた私に重なって共鳴した。ウンチョコDJ、家族のいるリビングで泣いちゃうかと思ったよ。
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小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』 「壮」なアルバム 〜ファースト・インプレッション・ノート〜

FM802『BINTANG GARDEN 小山田壮平のMUSIC FREAKSりたーんず』(8月23日)の放送の中で、リモートトークゲストの岸田繁は小山田壮平のそれを指して「へんなおじさんのアルバム」と表現した。「壮」には、「おとこらしい。つよい。血気盛ん。達者。」そんな意味があるらしい。厚生労働省提言における定義の中でも、小山田壮平や私の現在の年齢は「壮年期」に区分される。偶然か小山田壮平の名前にも付されたその文字の意味を思う。アルバム『THE TRAVELING LIFE』がそれに重なる。少年〜青年を経た旅のいま、これからを思わせる「壮」なアルバム。これからも「へんなおじさん」の動向を見守りつつ、愛聴していきたい。
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東京事変とバーチャルシンガー・YuNi

「直近の音楽」に影響を与え続けている張本人。ほかの新人たちのサウンドに感じる毒や刺激、ビートや低音と浮遊するウワモノや歌の対比。そうしたトレンドの発信元になっている存在こそ椎名林檎・東京事変ではないかとシミジミ思う。ワンコーラスで流してきたプレイリストだったけど、ここで足をとめてフルコーラス聴いた。ファッション的に見た目や形式をいくら真似されても、ここには林檎の赤がある。
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サザンオールスターズという存在が『みんなのうた』だ。 〜桑田佳祐『波乗りジョニー』、デビュー曲『勝手にシンドバッド』を振り返りながら〜

絵空事もリアルもぜんぶつなげて、わたしもあなたも「サザン」に含めてエンターテイメントにしてくれる。もはやバンドだとかJ-POPだとかいうだけの話じゃない。存在自体が『みんなのうた』なのだ。
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愛のいろいろ 斉藤和義『歌うたいのバラッド』

一本は、主音(レ)にとどまってずっとその音を鳴らしている。 もう一本が、ユニゾンを離れて自由に動きだすのだ。 ここに私は感動してしまった。 愛は、ずっと「同じ」じゃない。 ずっと「同じでいること」でもない。 ときに、ちがったことをしながら、ちがった場所にいながら、それでも同時に世界に存在する両者の関係。 2本のギターのアレンジから、そんなことを想像したら私は涙腺にキてしまった。
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荒井由実『卒業写真』に思う 「りんご」の真実

ファンクかR&Bの影響を思わせる。ドラムが非常にグルーヴィ。クリーンなエレクトリック・ギターが左、右にメロウなエレピ。ブラスやストリングスがサビを盛り上げる。音数の足し引きが非常に巧い。オルガンが空気のようにいて、曲の雰囲気のカンバスになっている。トーン変化のグラデーションも秀逸。
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音の肉体性 米津玄師『STRAY SHEEP』を聴いて

この荘厳なトラック数、音色数を持ったアルバムの楽曲たちをあえて生楽器のバンドや、さらには弾き語りで表現するのも「映える」だろうと思う。『STRAY SHEEP』ラストナンバーの『カナリヤ』をほぼ生楽器の音で描ききっていることから、米津玄師の「音」の肉体性への思いを私は感じる。