続きを読む 漫画 大橋裕之『音楽』 「ボボボボ…」の群像 淡白な絵柄なのだけれど、劇的で映画的。構図やコマ割りが秀逸で、登場人物たちの過ごす時間を私も一緒に気持ちよく流れた。亜矢と研二の仲も、作品の重要な要素。素のままにふるまうキャラたちが自然で好印象。
続きを読む 東京事変とバーチャルシンガー・YuNi 「直近の音楽」に影響を与え続けている張本人。ほかの新人たちのサウンドに感じる毒や刺激、ビートや低音と浮遊するウワモノや歌の対比。そうしたトレンドの発信元になっている存在こそ椎名林檎・東京事変ではないかとシミジミ思う。ワンコーラスで流してきたプレイリストだったけど、ここで足をとめてフルコーラス聴いた。ファッション的に見た目や形式をいくら真似されても、ここには林檎の赤がある。
続きを読む Bill Evansが奏でる『Danny Boy』ジャズの不思議 観察して、感じて、想像すれば。 スケールとかコードとかが、人為なのに数学的で天文的なのかな。水や空気のように、私に入ってくる。入ったことに気付かないこともある。共存しているし、生かしてもらってもいる。宇宙のしくみと似ているんだろうか。
続きを読む 【音楽日記】壮年時代 井上陽水『少年時代』を思う 歌詞に、井上陽水が創作したであろう語がならぶ。そんな語はない、というものを彼が創作したのだろう。“風あざみ”はその筆頭。その意味のわからなさがいい。ありふれたことばでありふれたことを言われても埋もれてしまう。井上陽水は少年時代の輝きを残した。こうして、彼の音楽と言葉で。実際の彼の体験かどうか知らないが。おのおのの少年時代を想像させ、自由の旅に連れ出してくれる。そんな曲。
続きを読む サザンオールスターズという存在が『みんなのうた』だ。 〜桑田佳祐『波乗りジョニー』、デビュー曲『勝手にシンドバッド』を振り返りながら〜 絵空事もリアルもぜんぶつなげて、わたしもあなたも「サザン」に含めてエンターテイメントにしてくれる。もはやバンドだとかJ-POPだとかいうだけの話じゃない。存在自体が『みんなのうた』なのだ。
続きを読む 愛のいろいろ 斉藤和義『歌うたいのバラッド』 一本は、主音(レ)にとどまってずっとその音を鳴らしている。 もう一本が、ユニゾンを離れて自由に動きだすのだ。 ここに私は感動してしまった。 愛は、ずっと「同じ」じゃない。 ずっと「同じでいること」でもない。 ときに、ちがったことをしながら、ちがった場所にいながら、それでも同時に世界に存在する両者の関係。 2本のギターのアレンジから、そんなことを想像したら私は涙腺にキてしまった。
続きを読む 肯定の讃歌 槇原敬之『どんなときも。』 さまざまなアーティストが、ミュージシャンたちが、自己肯定を歌にしてきた。それはつまり、「あなた」の肯定でもある。私はそういう肯定の歌が大好きだ。この世のあらゆるラブソングの中でも至上のものだと位置づけている。肯定は、愛なのだと思う。
続きを読む 荒井由実『卒業写真』に思う 「りんご」の真実 ファンクかR&Bの影響を思わせる。ドラムが非常にグルーヴィ。クリーンなエレクトリック・ギターが左、右にメロウなエレピ。ブラスやストリングスがサビを盛り上げる。音数の足し引きが非常に巧い。オルガンが空気のようにいて、曲の雰囲気のカンバスになっている。トーン変化のグラデーションも秀逸。
続きを読む くるり『男の子と女の子』 やさしさのうつろい それも、常にうつろう。徐々に、ときに急激に更新される。「やさしさ」についてもそうなのだ。普遍性は、変化する。『男の子と女の子』の歌詞の一行は、そこまで含めて提示してみせた。私はそう感じる。
続きを読む ウルフルズ『借金大王』 悶絶ブルーノートは情けの響き 金を貸したであろう主人公と借りた人物を軸に、借金の本質をつく鋭さ。人間の情けなさを含めて見事なブルース・ロックンロールとして歌い上げている。
続きを読む メーヴェの正体 19(ジューク)『あの紙ヒコーキくもり空わって』 「メーヴェ」ってなんやねんと当時から思っていたけれど、その正体も意味も知らずに、気にせず歌えてしまうアホが中学生の私だった。ちなみに今でもその自覚がある。